オンラインカウンセリングと
医療機関・公的相談窓口の違い
相談先は、つらさの重さだけで決めるものではありません。診断や治療が必要なのか、生活上の制度や地域支援につながりたいのか、気持ちや考えを継続的に整理したいのかによって、それぞれの役割を選び、必要なら組み合わせます。
診断・処方・診断書・身体面の評価が必要なら医療機関、利用できる制度や地域の支援先を知りたいなら公的相談窓口、気持ち・考え・人間関係・対処法を継続的に整理したいならオンラインカウンセリングが、主な選択肢になります。
ただし、三者の役割は完全に分かれているわけではありません。医療機関や公的機関で心理相談を受けられる場合もあり、民間のカウンセリングと医療・福祉を併用することもできます。「一つに決める」より、今必要な役割を確保することが大切です。
三つの相談先を、役割から比べる
名称だけでは実際の対応範囲を確定できません。次の表を出発点にし、利用する機関・サービスの最新案内を確認してください。
| 相談先 | 主な役割 | できることの例 | 診断・処方 | 費用と利用条件 |
|---|---|---|---|---|
| オンラインカウンセリング | 対話を通じた心理的支援と、生活の中での対処の検討 | 気持ちや考えの整理、自己理解、人間関係、ストレス対処、行動の振り返り | 民間の非医療サービスでは行わない | 自費が中心。料金、対象、相談時間、キャンセル条件はサービスごとに異なる |
| 医療機関 | 心身の状態を医学的に評価し、必要な治療を行う | 診察、検査、診断、薬物療法、医療としての心理療法、診断書、他科への紹介 | 医師が医学的判断に基づいて行う。オンライン診療では制限がある場合もある | 保険診療と自費診療がある。予約、紹介状、初診方法は医療機関ごとに異なる |
| 公的相談窓口 | 困りごとの整理、地域の医療・福祉・生活支援への接続 | こころの健康、受診、家族、ひきこもり、依存、福祉制度、生活上の困りごとの相談 | 相談窓口自体では通常行わない。必要に応じ医療機関を案内する | 相談無料の窓口が多いが、通話料、対象地域、受付時間、予約の要否は窓口ごとに異なる |
オンラインカウンセリング
話すこと自体と、対話を積み重ねることに重点があります。
- まだ名前のつかない悩みを言葉にする
- 気持ち、考え、行動のつながりを振り返る
- 自分に合う対処や伝え方を一緒に考える
医療機関
症状や身体状態を医学的に評価し、治療方針を考えます。
- 病気の可能性や身体的な原因を評価する
- 薬の必要性、効果、副作用を判断する
- 診断書や医療制度につながる診療を行う
公的相談窓口
困りごとを整理し、地域で利用できる支援へつなぎます。
- どこへ相談すればよいか一緒に考える
- 受診、福祉、家族支援などの情報を得る
- 本人だけでなく家族が相談できる場合もある
「オンラインで話す」ことと、オンライン診療は同じではありません
ビデオ通話や電話を使うことは共通していても、誰が、どの制度のもとで、何を行うかが異なります。
オンラインカウンセリング
心理的支援の提供方法です。民間の非医療サービスであれば、担当者が医療系資格を持っていても、そのサービスとして診断、処方、診断書の発行を行うものではありません。
オンライン診療
医師と患者の間で、情報通信機器を使って診察や診断、処方などを行う医療です。厚生労働省は、得られる情報に限界があるため、対面診療と適切に組み合わせることを基本としています。
医療機関の心理支援
医療機関が、診療の一環または自費サービスとしてカウンセリングや心理療法を提供する場合があります。保険適用、主治医との連携、記録の扱いは医療機関へ確認します。
オンラインカウンセリングが力を発揮しやすいこと
相談内容が軽いときだけの場所ではありません。一方で、状態の評価や治療をカウンセリングだけで完結させないことが大切です。
対話の中で一緒に取り組めること
- 不安、怒り、悲しさ、孤独感などを安全な場で言葉にする
- 考えが堂々巡りするときに、事実、解釈、気持ちを整理する
- 家族、友人、職場などの人間関係と、伝え方を振り返る
- ストレスへの対処、生活上の工夫、行動の選択肢を考える
- 病気、治療、介護、喪失などと付き合う気持ちを支える
- 医療や福祉を利用しながら、日常生活での変化を振り返る
- 深刻になる前に、違和感や迷いを予防的に相談する
オンラインカウンセリングの担当者は、相談者の話をもとに心理的な支援を行いますが、画面や言葉だけでは身体状態や病気を評価できません。発熱、痛み、動悸、息苦しさ、極端な疲労などの身体症状があるときは、心理的な原因と決めつけず、医療機関へ相談してください。
医療機関を先に、または並行して考えたい場面
次の項目は病名を判断するための自己診断表ではありません。「当てはまれば必ず病気」という意味ではなく、医学的な評価を受ける理由になります。
眠れない、食べられない、仕事や家事へ行けないなどが続く、または悪化しています。
痛み、動悸、息苦しさ、意識や判断の変化など、身体面を含めた確認が必要です。
病気かどうか、薬や休養が必要か、どの治療が考えられるかを医学的に相談したい状態です。
薬の開始、中止、量の変更は自己判断せず、処方した医師や薬剤師へ相談します。
通院中断後の悪化や、これまでと違う変化があるときは、以前の医療機関や地域の医療へつなぎます。
休職、復職、就学上の配慮、制度申請などに医師の診断書が必要な場合は医療機関へ相談します。
公的相談窓口は「どこへ行けばよいか分からない」ときにも使えます
公的窓口は、病気が確定した人だけの場所ではありません。本人だけでなく、家族から相談を受ける窓口もあります。対象、相談方法、予約の要否は地域によって異なります。
保健所・保健センター
こころの健康、受診、医療中断、ひきこもり、依存、家族の困りごとなど、地域の保健・医療・福祉に関する相談を扱います。
- 受診先や地域支援を知りたい
- 本人が受診をためらい、家族が困っている
- 医療と生活支援の両方を相談したい
精神保健福祉センター
都道府県・指定都市の専門機関として、精神保健や精神障害者福祉に関する専門性の高い相談、依存症、ひきこもり、家族支援などを行います。
- 相談が複数の問題にまたがっている
- 地域のどの機関がよいか分からない
- 専門的な精神保健福祉相談を受けたい
市区町村の各相談窓口
生活困窮、障害福祉、子育て、介護、DV、住まいなど、困りごとに応じた担当窓口があります。心理面と生活上の問題を分けずに伝えてかまいません。
- 生活費、住まい、仕事、制度利用で困っている
- 介護、子育て、家庭の安全も関係している
- 申請できる制度や支援機関を知りたい
064-556
こころの健康相談統一ダイヤル
電話をかけた所在地の都道府県・政令指定都市が実施する、公的なこころの健康電話相談などへつながる全国共通番号です。
受付曜日・時間は地域により異なり、通話料がかかります。050から始まるIP電話では接続できないため、厚生労働省の案内から各地域の直通番号を確認してください。
電話で話すことが難しい場合は、厚生労働省「まもろうよ こころ」で、電話、SNS、チャットなどの相談窓口を探せます。窓口ごとに対象年齢、相談内容、受付時間、匿名利用の可否が異なるため、最新案内をご確認ください。
職場や学校の相談窓口が適していることもあります
悩みの解決に、勤務上・就学上の調整が必要な場合は、外部の相談だけでなく、組織内の窓口が役立つことがあります。
職場
産業医、保健師などの産業保健スタッフ、社内相談、外部EAP、人事労務などがあります。健康相談と、勤務上の配慮・手続きでは担当が異なる場合があります。
学校
スクールカウンセラー、養護教諭、学生相談室、担任、特別支援や修学支援の窓口などがあります。欠席、学習、対人関係、安全、配慮の相談を分けて扱う場合があります。
相談先は併用できます
医療を利用しているからカウンセリングを使えない、公的窓口へ相談したら民間相談をやめなければならない、という関係ではありません。役割を分け、連携が必要な範囲を確認します。
医療+職場+カウンセリング
医療機関で心身の状態を評価し、職場では勤務上の相談を行い、カウンセリングでは不安や今後の対処を整理する、という分担が考えられます。
公的窓口+家族自身の相談
保健所や精神保健福祉センターへ家族が相談し、受診や地域支援へのつなぎ方を考えながら、家族自身の負担をカウンセリングで扱う方法があります。
身体科の医療+カウンセリング
病気の治療は医療機関で続け、喪失感、将来への不安、家族との関係、生活の再構築をカウンセリングで考えることができます。
生活相談+医療・カウンセリング
生活や制度の問題は自治体等へ相談し、症状の評価が必要なら医療へ、気持ちや意思決定の整理にはカウンセリングを利用するなど、問題ごとに役割を分けられます。
迷ったときは、この順番で考える
すべてを自分だけで判定する必要はありません。最初につながった支援先へ、「別の支援も必要でしょうか」と尋ねてかまいません。
- 生命や安全に差し迫った危険はありますか。ある場合は、通常の予約を待たず、119、110、地域の救急、公的な危機相談へつながります。
- 診断、薬、診断書、身体症状の評価が必要ですか。必要、または判断できないほど症状や生活への影響がある場合は、医療機関を先に、または並行して考えます。
- どこへ行けばよいか、どの制度を使えるか分かりませんか。保健所、保健センター、精神保健福祉センター、市区町村などの公的窓口へ相談します。
- 気持ち、考え、人間関係、対処を継続的に整理したいですか。相談範囲と安全体制を確認したうえで、オンラインカウンセリングを選択肢にします。
- 一つの場所だけでは足りない問題がありますか。本人の希望を大切にしながら、医療、心理、福祉、職場・学校の役割を組み合わせます。
最初に選んだ相談先が最終的な支援先でなくても、失敗ではありません。今話しやすい場所から始め、必要な支援へ紹介してもらうことも、相談の大切な役割です。
相談するとき、何を伝えればよいですか?
説明がまとまっていなくても利用できます。分かる範囲だけ伝え、「何から話せばよいか分からない」と始めてもかまいません。
分かれば伝えたい五つのこと
- いつごろから、どのような困りごとがあるか
- 睡眠、食事、仕事、家事、学校、人間関係へどの程度影響しているか
- 治療中の病気、服用している薬、これまで利用した支援があるか
- 今いちばん困っていることと、今日知りたいこと
- 自分や他人の安全について、いま心配なことがあるか
相談を受ける側は、対応できることとできないことを説明し、必要に応じて別の支援先を案内することが求められます。紹介を提案されたことは、悩みを拒まれたという意味ではありません。今の状態に必要な役割を増やすための提案か、理由を確認してください。
相談先を決める前の確認チェックリスト
答えが一つに決まらなくても問題ありません。複数に印がつく場合は、併用や紹介を含めて相談します。
いま必要な役割はどれですか?
- 診断や病気の可能性を医学的に相談したい
- 薬の開始、効果、副作用、中止を相談したい
- 身体症状や急な変化を確認してほしい
- 診断書や医療上の書類が必要である
- 受診先や地域の支援先が分からない
- 生活、福祉、住まい、家族の問題も重なっている
- 本人ではなく家族として相談したい
- 職場や学校での配慮・調整が必要である
- 気持ちや考えを時間をかけて整理したい
- 人間関係や伝え方を振り返りたい
- ストレスへの対処を一緒に考えたい
- 医療や福祉を利用しながら心理的支援も受けたい
よくある疑問
精神科へ通院しながら、オンラインカウンセリングを利用できますか?
併用できる場合があります。カウンセリング側へ通院中であることを伝え、対応範囲を確認してください。治療方針や薬については主治医へ相談します。情報共有が必要な場合は、共有する内容、目的、方法、同意について確認します。
民間のオンラインカウンセリングは健康保険を使えますか?
医療機関ではない民間サービスは自費が中心です。医療機関が行う心理支援でも、すべてが保険適用になるわけではありません。保険診療か自費診療か、料金、キャンセル条件を申込み前に確認してください。
公的相談窓口で診断してもらえますか?
公的な相談窓口は、困りごとの整理や受診・福祉支援への接続を主な役割とし、窓口そのものが通常の診療を行う場所とは限りません。医師が相談に関わる場合もありますが、診断、処方、診断書が必要なときは医療機関へ確認してください。
どこに相談すべきか分からないまま、連絡してもよいですか?
かまいません。保健所、保健センター、精神保健福祉センターなどは、どこへ相談すればよいか分からないときにも利用できます。オンラインカウンセリングを選ぶ場合も、対応できる範囲と、医療や公的支援を勧める条件が説明されているかを確認します。
医療機関を勧められたら、カウンセリングを断られたということですか?
必ずしもそうではありません。身体面や症状の評価、薬、診断書など、カウンセリングでは提供できない役割を追加する提案の場合があります。なぜ医療が必要と考えたのか、カウンセリングを並行できるか、次にどうつながるかを確認してください。
家族のことを、本人に代わって相談できますか?
保健所、保健センター、精神保健福祉センターなどは、家族からの相談を受ける場合があります。民間サービスは、家族相談の可否、本人情報の扱い、緊急時の対応がそれぞれ異なります。本人の診断や治療については、本人を診察する医療機関の判断が必要です。
